ガラスの定義に「常温における非常に粘度の高い液体」というものがあります。この液体は600度前後から徐々に粘性が低くなり、1000度を超えると水飴のようになります。見た目は固体でも実態は液体、ガラスは鉱物と液体の性質を併せ持つ特殊な存在です。
作品は、この二重性を持つガラスを用いることで自然と人間の一体化を意図しています。板ガラス固有の色(緑色)に水滴のような形を与えると鉱物と液体の二重性は作品上に可視化されます。これにより視覚上の認識が混乱させられ、「私」と環境の境目は曖昧になります。
皆さん、どうぞ岩の上に置かれた「動かない水=ガラス」を覗き込んでください。凸凹のレンズと鏡によって生まれた複雑な映像を見ることができます。これらの像はエッシャーのような循環する像であり、境界も表裏の区別を持たないクラインの壺のようなものです。これらの視覚上の効果により石・植栽・水・人は一体化されるのです。
神奈川由来の根府川石の石組みから静かに湧き出る水が流れとなって下流へと導き、それに呼応するかの如く造形美の象徴でもある『動かぬ水=ガラス』が徐々に形を変えながら、季節や時間と共に移ろう情景の中で『自然と人を一体化させる』場を提供します。
作家名 | 家住 利男 |
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設置場所 | 1F 屋外〈神奈川大学みなとみらいキャンパス〉 |
材質 | 板ガラス、根府川石 |
サイズ | 9m×3m(水景全体) |
制作年 | 2020(令和2)年11月 |