京セラがMMから漕ぎ出すオープンイノベーション

京セラがMMから漕ぎ出すオープンイノベーションの写真

みなとみらい21地区は、多くの企業や団体が集まる経済の集積地。ここで働く皆様に、みなとみらい21地区の魅力を直接語っていただこうと、今回は2019年5月にオープンした京セラ株式会社の「みなとみらいリサーチセンター」の方々にお話を伺いました。

お話いただいたのは、研究開発本部の髙橋聡さん、北村和生さん、日高秀樹さん、稲垣智裕さん、藤井俊一さんです。

5人並び.jpg 左から北村和生さん、日高秀樹さん、髙橋聡さん、稲垣智裕さん、藤井俊一さん

――まずは「みなとみらいリサーチセンター」について教えてください。

高橋さん1.jpg髙橋聡さん

(髙橋さん) 機器やシステム、ソフトウェアの研究開発拠点として昨年5月に開所しました。現在、約700人の研究員が働いています。「リサーチ」という言葉を聞くと、デスクワークのイメージがありますが、みなとみらいリサーチセンターの3階には様々な測定器や試作設備も備えており、「実際に手を動かす」施設となっています。  また、「オープンイノベーション」をテーマに掲げているのも大きな特徴です。社内外の多くの人が出会い、交流、協力しあいながら新たな価値を生み出す、という目的で共創スペースを設置し、社内外連携を含めた取り組みに力を入れています。

――みなとみらいに拠点を集約した理由は?

(髙橋さん) システム関連の研究開発部門は、元々関東近辺に分散していました。それを一カ所にまとめて開発体制の強化を図るということが発端です。みなとみらい21地区は、交通アクセスの良さはもちろん、大手企業の研究開発拠点や200以上の外資系企業が存在しています。音楽やアート、食といったクリエイティブな文化も豊かですし、行政も含めた地域連携が盛んなのも素晴らしい。これらを総合して、ここに決定したのだと理解しています。個人的にも、企業や人が集まる要素が凝縮された、国際的な港町という印象です。

――みなとみらいは、オープンイノベーションが促進できる雰囲気があるということでしょうか。

稲垣さん.jpg稲垣智裕さんpissi.jpg子どもの仕上げ磨き専用ハブラシ「Possi」

(稲垣さん) はい。この地域に集まる人たちは、従来の枠にとらわれずに自分のやりたいことを追求する開発マインドが強いと感じますね。  私は、SonyさんとLIONさんとのオープンイノベーションで、子どもの仕上げ磨き専用ハブラシ「Possi」のプロジェクトリーダーを務めていました。そもそもPossiは、私が小さな3人の子どもの父親として子どもの仕上げ磨きに苦労しており、「子どもを楽しませながら歯磨きができるハブラシを開発できないか」と思ったのがきっかけです。そこを出発点に、京セラのセラミック技術と、LIONのオーラルケア製品のノウハウ、Sonyのデザイン協力を組み合わせることで、ブラシの振動による骨伝導で、歯を磨いている間だけ音楽が聞こえるユニークな製品Possiを生み出しました。  実際に自宅で使うと、子どもは喜んで使ってくれますし、妻との些細なケンカも減ったように感じますね。  この時の体験は自分にとって大きな衝撃で、こうした熱意を持った人たちがこのみなとみらい21地区には多いと感じます。

――このセンターで重点的に開発している分野は何ですか?

藤井さん.jpg藤井俊一さん日高さん.jpg日高秀樹さん

(藤井さん) ここでは、自動運転などの車載分野、5GやIoT等の情報通信分野、太陽光などの環境エネルギー分野のシステム開発を主に取り扱っています。今年2月、3月に各分野において実証実験も行っており、社会実装に向けて邁進しているところです。

(日高さん) また、京セラではこのセンターのほかに、素材やデバイス分野をメインとする「けいはんなリサーチセンター」(京都府相楽郡)、医療ヘルスケアを取り扱う「メディカル開発センター」(滋賀県野洲市)、ファインセラミックスの基礎と応用技術の開発を行う「ものづくり研究所」(鹿児島県霧島市)など、国内の各拠点で研究開発を進めています。

――オープンイノベーションを進めるために共創スペースを設けたと聞きましたが。

クリエイティブファブ.jpgクリエイティブファブI-Square.pngイノベーションスクエア北村和生.jpg北村和生さん

(北村さん) そうですね。1階のけやき通りに面する「クリエイティブファブ」には、3Dプリンターや塗装設備など、すぐに試作品が作れるようなスペースを作りました。また、同時にデザイン部門を新設することで、エンジニアたちの中で浮かんだアイデアを素早くデザイナーが視覚化し、社会に実装しやすい環境としました。
6階の窓から海を望むように設計された「イノベーションスクエア」は、社内外の人の交流が盛んになるよう、開放的な雰囲気を演出しています。230人が収容できるスペースは、様々な用途に使えるようレイアウトを自由にでき、プレゼンテーションシステムも完備しています。これら共創スペースを通じて新たなブレイクスルーが生まれることを期待しています。

――今後の展望は?

言葉.jpg

(髙橋) 「オープンイノベーション」という言葉は数年前から様々な場面で使われてきましたが、一種のトレンドというイメージが強かったように思います。しかし最近は少しその流れが変わってきたように感じています。  これまでのオープンイノベーションは、個別企業が個々の企業課題を解決するために他社やユーザーとコラボレーションするイメージでしたが、最近は企業や行政、大学、小学校や地域コミュニティ、そして市民も巻き込みながら、企業課題と社会課題を上手く結びつけて解決する、という意味合いが強まってきたのではないでしょうか。  オープンイノベーションはまだまだアイデアレベルという方もおられますが、単なる企業課題の解決アプローチという事だけではなく、社会課題という観点からもその取り組みを捉え直してみたいと考えています。みなとみらい21地区の恵まれた環境を生かして、みんなでオープンイノベーションを推進して行きたいですね。