みなとみらい21地区に拠点を構える企業や団体の皆様に、直接街の魅力をご紹介いただくことで、このエリアで働くことの魅力に迫る企画。 今回は、2020年4月にオープン予定の「ぴあアリーナMM」を企画担当しているぴあ株式会社の方々にお話を伺いました。
お話いただいたのは、ぴあ株式会社アリーナ事業創造部の部長・鈴木悠太さん、櫻井瑞穂さん、コンテンツビジネス開発部の平野学さん、広報室の糸井ジョイトイさんです。
左から鈴木悠太さん、櫻井瑞穂さん、平野学さん、糸井ジョイトイさん
鈴木さん:
ここ数年で音楽ビジネスの売上の中心が、音楽配信やCDなどのパッケージ販売からライブへと変わってきています。 中でもアリーナクラスは収益的に大きい部分を占めているので、そのアリーナが足りていないことは課題でした。それが顕在化したのが、2016年にさいたまスーパーアリーナや横浜アリーナが改修工事で休館したとき。業界的に会場不足が叫ばれるようになり、ちょうど私たちも会場をつくろうと考えていた時期だったので、足りないということであれば、僕らがつくるしかないという話になりました。
平野さん:
都心臨海部にはアミューズメントや飲食施設などがあり、ライブが終わった後も楽しめる街という印象があります。加えて、会場のまわりは宿泊施設が充実しています。新しく商業施設もできるなど、良い条件がそろっていました。また、首都圏から電車で30分以内という立地と、複数路線が走っているのも大きいです。
櫻井さん:
まず一つは、音楽コンサートに特化していることが大きな特徴です。日本にあるさまざまな会場は、スポーツや地域のイベントなど色々な目的で使われることを想定していますが、今回は音楽に振り切った施設づくりをしていて、バックヤードや設備の面でも音楽コンサートの利用を想定してつくっています。客席の配置は、末広がりではなく、階を上に重ねていく縦長の箱型で、なるべくお客様がアーティストを近くで見ている感覚を持てるようにと考えています。
鈴木さん:
また、基本的にアリーナ内での飲食は自由にとっていただけます。欧米ではもっと自由に飲んだり食べたりしながらライブを見る文化が根付いています。日本は、どちらかというと開演直前にパッと来て、ライブを見るとすぐ帰るという人が多いですが、それだけだともったいないですよね。もっとその瞬間を楽しんでもらいたいという観点から、座席での飲食を可にしているのが大きなポイントです。
櫻井さん:
ホスピタリティラウンジがあるのも特徴です。当日の公演のチケットをお持ちのお客様にご利用いただけるラウンジを用意し、開演の数時間前からからゆったりと過ごせるようにしています。ただスペースを提供するだけではなく、どのように過ごせるのが良いのかを検討し、ビュッフェの提供、充電器やヘッドホンの貸出サービスなどを予定しています。内装も凝っており、ガラスのカーテンウォールに面した抜け感のある空間に設計しています。余裕をもって会場へ来て、ラウンジでくつろぎつつ気持ちを高め、いい状態でライブに臨めるような場所になるように作っています。
櫻井さん:
1階のコモンスペースには、サイネージを設置して、インスタレーションや周辺飲食店の情報を流す予定です。ただの待機場所、通路ではなく、見て楽しめるエリアにしたいと考えています。アクティビティフロアとしては、2階にイベントがない日もオープンするオールデイカフェダイニングがあります。 全80席のカフェダイニングは、ペデストリアンデッキに面していて、将来的にみなとみらいの周辺施設につながる予定です。ガラスの折れ戸を全面に使うので、かなり開放的な空間になると思います。コモンスペースもアクティビティフロアも、ライブ来場者以外の方も入れる場所になっています。ライブに来たお客様だけではなくて、周辺で働いている方や住んでいる方々に向けても楽しんでいただけるような場所にしていきたいと考えています。
糸井さん:
アリーナにくるお客様だけでなく周辺で働いている方々も含めると、客層は非常に幅広いので、どのような方でも落ち着いてゆっくりできるような空間を目指し、緑を取り入れたりなどもしています。もちろんそれだけでなく、ライブ会場にあるカフェとして、さりげなく音楽を想起させるようなデザインも散りばめていますので、ご注目いただければと思います。
鈴木さん:
どうなんでしょう(笑) もともとぴあは、社長の矢内がベンチャー的に「こういう雑誌があったらいいのではないか」と思い立ったところから始まっており、これまで「主催者やアーティストとお客様をどうやってつなげられるか」を考えてきました。今回は、たまたまそれが「会場」だった、というくらいに捉えています。投資規模的には思い切りましたが、事業の本質的にはそれほど変わっていないと感じています。 また、他の会場は、例えば行政が入ったり複数企業で運営されており、それ自体が強みでもありますが、私たちは一社単独でやってみてどこまでおもしろい会場をつくることができるか、どこまで主催者に寄り添った会場をつくることができるか、挑戦してみたかったというのがあります。
ぴあアリーナMMの外観イメージ
鈴木さん:
計画段階で、ニューヨークやロンドンに行き、海外のアリーナを視察しました。外国にあるアリーナは、街の中に溶け込んでいて、周辺に飲食店がたくさんあります。それに比べると、日本は土地がないのもありますが、割と郊外にあり、アリーナ単体としてしか機能しておらず、街に包含されているものは少ないです。私たちが目指しているのは欧米型のアリーナなので、ぴあアリーナMMができることで街全体が活性化してくれれば良いと考えています。
平野さん:
地元の団体などから、ぴあアリーナMMができた際の地域連携や地域への経済効果について聞かれる機会があります。「やります」と言っているだけではなく、具体的な形にしていこうということで、『横浜みなと未来ぴあ』を発行することとなりました。 一番のポイントは、終演後のアフターエンタテインメントです。横浜、特にみなとみらい地区は閉店するのが早いお店が多いと言われています。
それを街全体の課題として捉え「横浜の近未来が変わる」というテーマで取り上げました。観光客だけではなくて、労働人口も増えることが見込まれ、さらにエンタテインメントを楽しむお客様も増えるといった状況をふまえ、地域の方々にナイトタイムエコノミーの推進についてインタビューをさせていただき、問題を共有して地域の方々とともに次のステップへ進む、というのがこの雑誌の趣旨です。
「ミュージックシティ・横浜」という企画もあります。横浜を音楽の街にしていくという構想です。地域を巻き込みながら、音楽で人がつながったり、街がつながったりできる企画を、地域の皆さんと一緒に取り組んでいきましょう、というメッセージブックも展開する予定です。地図を載せたり、新しくできる施設にインタビューさせていただいたり、音楽のイベントカレンダーやライブの前後を楽しめるレストラン・アミューズメントを特集します。来年3月下旬に発刊予定です。
また、「YOKOHAMAミッドナイトHAR★BAR」という、横浜を「世界一夜が楽しめる街」とするための第一歩の企画を、ぴあ総合プロデュースで2019年12月14日に開催しました。24時までイルミネーションを点灯し、コスモクロックの営業時間を延長したり、街を回遊する京急のオープントップバスを無料運行したり、ライブが楽しめるクルーザーを深夜まで運航したりしました。2020年以降も、エリアを拡大しライブコンテンツをより充実させて開催したいと考えています。
平野さん:
ぴあだけではなく、街全体が一丸となってどれだけ街を楽しめるようにするかが重要だと思っています。街を訪れたところからエンタテインメントが始まり、帰るまでが一つのストーリーになっていると考えて、「横浜に来て良かった」「ライブもよかったし、街もよかった」と思っていただけるような地域との連携を考えていきたいです。 社長の矢内が言っているように、ぴあは100年企業を目指しています。お客様のためだけではなく、地域の方に対しても貢献できるような、街とともに栄えていくような企業でありたいという思いでやっていきたいです。